海洋プラスチック_素材の代替化を進め熱回収に依存しない体制確立を_東京農工大 高田教授

令和2年4月22日環境新聞記事から抜粋

我が国の海洋プラスチック問題解決に向けた取組では、昨年5月に「プラスチック資源循環戦略」が公表され、具体的な取組として今年7月からレジ袋の有料化義務化がスタートします。海洋プラスチック汚染問題に詳しく、中央環境審議会プラスチック資源循環戦略小委員会の委員も務めた東京農工大学の高田教授は、依然として日本のプラスチック対策が遅れていることを指摘し、素材代替化を進めるとともに、熱回収に依存しない体制を構築することの必要性を訴えています。また、新型コロナウィルスの問題で海洋汚染が悪化することを懸念しています。

環境新聞社は、高田教授に海洋プラスチック問題の現状や今後についてインタビューを行っており、ここでは同社の記事から、その概要をまとめました(文責:管理人)。

  • 諸外国に比べ、日本の取組はまだまだ遅れている。レジ袋有料化がスタートするが、海のごみの中でも量の多いペットボトルについては、ほとんど国としての対策が取られていない。プラスチックを自然素材のものに置き換えたり、バイオマスベースかつ生分解性のプラスチックに代えていくことが、ほとんど進んでいない。
  • 新型コロナウィルスの問題が起こり、まとめて包装していたものが個別包装に戻るといった状況で、プラスチック廃棄物の発生量は増えている。海のプラスチック汚染の状況はより悪くなってしまうのではないかと懸念している。
  • 資源循環戦略では、熱回収をかなり肯定的に評価しており、それを途上国にも広げようとしていることが問題だ。プラスチックの熱回収は短期的な経済効率には適っているが、長期的な地球温暖化の問題や資源の持続的な利用という観点では国際的に通用しない。
  • 資源循環戦略では、個別の品目として挙がっているのがレジ袋のみであり、海のごみでレジ袋より多いペットボトルの削減を進めていく必要がある。レジ袋有料化は意義のあることであるが、あくまではじめの一歩である。
  • やはりプラスチックの使用量を減らしていくことが大切だ。医療用を中心に必要なプラスチックはあるので、自然素材に置き換えられるところは置き換え、不必要な包装は極力減らし、必要なところに使うプラスチックは大切に繰り返し使っていくことが重要だ。
  • バイオマス素材で生分解性の包装への切り替えが進まないうちに、新型コロナの問題で密閉性の高い包装が必要になり、結果として石油ベースの包装が大量に必要になり、衛生上の問題から繰り返し使わずに廃棄される状態になった。コロナが終息しても同じような問題が起きる可能性があるので、継続的にプラスチックの代替化に取り組んでいく必要がある。
  • 新型コロナなどでは免疫力の低い人が重症化する。プラスチックの添加剤や吸着している化学物質は、内分泌系に影響し、免疫力を低下させることにもなる。人類の免疫力を高める、少なくとも落とさないためには、添加剤を含むプラスチックを大量に使うのを止めるのも必要なことだ。